それでも世界が続くならメンバー加入、活動再開についての手紙


こんばんわ。
僕らのバンド、9月1日から、活動を正式に再開することにしました。

そして、新メンバーにカレンちゃんを迎えて、4人で活動します。


僕らが活動中止を決めてから2年、実際に活動が止まってから約1年弱、
あれから自分なりに足掻いてはみたけど、正直ずっと「もう音楽は辞めてもいいんじゃない」って思っていました。

思えばバンドを組んだ時も、メジャーデビューした時も、いつかあの時のいじめっ子達が僕の音楽をどこかで聴くかもしれない、たくさんの友達が欲しいわけでもない、有名になりたいわけでもない、じゃあなんで音楽やってるんだっけ。

このバンドは、僕や僕のまわりの人のことを、反撃や復讐にも似た気持ちで、僕が勝手に歌うだけのバンドでした。
でも、続けているうちにショウゴやガースー、なによりこんな僕の音楽を聞いてくれる君みたいな人がいてくれて、守りたいものが増えて、守ろうとしてみて、でも俺にはやっぱりそんなことできなくて、自分がなにがしたいのかなにができるのかもよくわからなくなってきて、活動中止が決まった頃から、漠然と「もう俺は音楽やらなくてもいいのかな」って思う様になっていました。
でも、そんなこと考えてたって知ったら、きっとショウゴやガースーは悲しむだろうな。

そう思って、この数ヶ月間は、コイントスの様に、「解散か、再開か」を賭けて、何も考えずに行動していました。
正直どっちに転んでもよかったんだと思う。
なんとなく、僕らが活動中止をしてから1年後の9月2日までに一緒にやりたいと思える人がいないなら、僕の音楽はここまでが寿命ってことにしよう、漠然と、僕の中で勝手にそう思っていました。
でも、そうやって短く寿命を決めると、残りの時間を精一杯やろうと思えてしまうから、不思議だよね。

俗に言う一般的なバンドマンが思う「売れる売れない」っていう基準でいえば、僕は売れる道を蹴り続けてきたんだと思う。イエローモンキー先輩の事務所に入れてもらった時、クラウンに見つけてもらった時、初めてTVに曲が流れた時、思えば僕に期待してくれた人の数は、僕が思っていたよりも多かったんだとも思う。
僕が当たり前みたいな顔してそういう話を蹴る度に、ショウゴやガースーには将来の心配も、迷惑も、遠回りもさせてきてしまったと思う。
それでも、ただの一度も、あいつらは僕に文句を言ったことはなかったんだけどね。

メンバー、っていうか友達に、迷惑や心配をかけること、応援してくれる人やレーベル、聞いてくれる君やあの人の気持ち、なんかそういう守りたいものや背負いたいと思ったものが、いつのまにか僕にとって重い鎖になって、僕や僕の音楽が重たくなってしまったんだと思う。

僕はずっと、これを読んでくれる君と、同じところで歌いたかった。
例えば大きなステージとかからじゃない、同じ音楽が好きで、同じ時代に苦しんだ仲間として、
上からじゃなくて、隣で歌いたかった。

君と同じ様に音楽が好きな僕が、同じものを見て、同じ感覚で、同じ悩みを、
音楽を通して君と対等に話したかった。

僕はただ、そんな話ができる相手が欲しかっただけなのかもしれない。

もしかしたら、僕が好きになった音楽を通してなら、それができるかもしれない。
あの時は言えなかったけど、君とちゃんともう一度話ができるかもしれない。
子供っぽい話だけど、音楽が重くなった今も、まだ僕はそんなことを思っている。

僕は、こんな僕がまだ僕が音楽をやってもいいと、自分で思える様になりたかった。
だって、こんな鎖は自分で勝手に作ったものだ。
僕はもう一度ちゃんと話ができるように、この鎖を外すきっかけが欲しかったのかもしれない。

で、カレンちゃんの話。
つい先月、父親のいない僕がずっと父親代わりだと思っている地元の千葉LOOKってライブハウスのサイトウ店長とカレンちゃんが初めて会った日、
「あのさ、こいつらは、ドラマーじゃなくて、メンバーがほしいのね。で、こいつらは売れたいとかお金が欲しいとかじゃなくて、本気で音楽がやりたいの。もし君が違うなら消えて。でも君がもし同じなら俺らはウェルカムだから。」
って急に言いだして。
僕はそういう話あんまりサイトウさんに話したことなかったし、いったい何が起きてるんだと思ったけど、
でもカレンちゃんが「はい」って頷いてて。

僕は過去の経験的にも誰かに気にされるのが不安っていうか苦手で、僕のバンドを心から大切にしてくれる人とは一緒にできないなあって思ってたんけど、なんか2人のやりとり見てたら、周り見えてなくて不器用ででもすごい真摯で、なんか「俺も勝手にやろう」って思えてさ。
俺が自分に巻いた鎖が外れたわけじゃないけど、なんか、どうでもよくなってきた。重くても重くなくてもどうでもいい。


そんな訳で、心から一緒にやりたいと思える人が見つからなかったら辞めようかと思ってた僕ですが、
元女子バスケ部のキャプテンで、体育会系で、ボーイッシュで、努力家で、不器用で誤解されやすそうだけど、
「私バカなんで」で自分で言っちゃう様な、気取らなくて、一生懸命で、ちょっと不良な妹ができてしまったので、
僕と僕らのバンドは、2019年9月1日から、ちゃんと活動を再開します。


そういえば、このバンドって、そもそも僕の夢や希望が終わったとこから始まったバンドだったよな。
初心に帰ろうとか思ってたけど、最初から、初心じゃないこの気持ちが俺の初心だったんだっけ。

「それでも世界が続くなら」の続きの文章、今の僕ならなんて書くんだろう。
今日なら、 「彼女はまだ音楽を辞めない」とかかな。

あの子も、カレンちゃんも、君も、誰のことも気にせずやりたいようにやってほしいよ。
だって君の人生の責任は、親でも先生でも友達でも、君以外にはとれないんだから。
なんて俺が人のこと言えるかよ。だよな、ごめん。


ところで、君は元気だったかい。
こんなバンドの活動再開の手紙を読んでくれて、そりゃ俺は嬉しいけど、
よくあるロックバンドみたいに、一歩通行なのも、俺だけ嬉しいのも、俺は嫌だ。

これを読んでくれてる君、君の心はまだ苦しいままかい。
手紙をくれた君、君はまだ死にたいって思ってしまうかい。
あの時話しかけてくれた君、今日は誰かに緊張せず話せたかい。
あの日ライブに来て泣いていた君、君は今日は泣いてはいないかい。

それと比べたら、どっかのバンドの活動再開とか、どうでもいいよ。
だって音楽は、人間のために、君の心がマシになるためにあるんだから。


君は元気だったかい。
もしも、まだ元気じゃないなら、またおいでよ。

君が隠したこと、許せなかったこと、本当は幸せになりたかったこと、
君が嫌だって言っても、俺は君のこと勝手に歌にするんで覚悟しといてください。

やるからにはやり残したことやって、俺の音楽ごと道連れにして燃え尽きるつもりでやるから、
また暫くの間、よろしくね。


篠塚将行/それでも世界が続くなら